モメンタムファクトリーOrii

モメンタムファクトリーOrii

有限会社モメンタムファクトリー・Orii 折井宏司氏
クリエイティブディレクション
インテリアデザイン
プロダクトデザイン
アートディレクション
事業継承
技術継承
補助金利用
地域創生
デザインコンサルティング
展示会プロモーション
ブランディング
パッケージデザイン
商品企画
キャスティング

市場と共感する伝統工芸の新しい価値をつくる

【経営課題】

2011年当初、モメンタムファクトリー・Orii社は、伝統的な銅器着色業から建築建材事業へとシフトしており、クラフト商材や展示会ブースのデザインに至るまで、折井社長自ら行っていた。特徴的な技術と職人視点の無駄のないオリジナルのプロダクトは、momentumブランドとして既に一定の市場評価を獲得していた。事業展開に於いては、さらなる市場や新規顧客の拡大が課題であったものの、潜在的なニーズを掘り起こす可能性を持っていた。
また、高岡銅器の産地に於いては、生き残りと技術継承という課題を抱えている。モメンタムファクトリーOrii社も例外ではなく、家業としての事業継承という潜在的な課題がある。未来に向いた課題と伝統に向いた課題、2つのベクトルをもって事業を持続、成長させていくことが特徴だと感じた。
社会のニーズや価値観の変化を観察しながら、常に対応し発信し続けてくことが必要な一方で、若い世代のモチベーションを引き出し、育成しながら技術を継承していくことも忘れてはならない。銅器着色という、特殊で趣向性の高い商品(技術)の価値に共感性を高め続けることが求められている。

糠や緑青を使用して行われる高岡銅器の伝統的な着色技法 糠や緑青を使用して行われる高岡銅器の伝統的な着色技法
糠や緑青を使用して行われる高岡銅器の伝統的な着色技法
現在の商品やサービスとそれぞれの市場を視覚化することで、今後の事業計画と企画を立案(2015年)
現在の商品やサービスとそれぞれの市場を視覚化することで、今後の事業計画と企画を立案(2015年)
事業部門ごとに商品やサービスが消費者までのルートを視覚化したマスタープラン(2016年)
事業部門ごとに商品やサービスが消費者までのルートを視覚化したマスタープラン(2016年)

【計画・目標】

2011年〜 One to one Brooch / tone 男女問わず気軽に身に着けられるブローチや、日常で使用できるクラフト商品によって、さらなる認知を高め、新規顧客の獲得と売上の向上を目標とした。

one to one Brooch (2012年)
one to one Brooch (2012年)
tone シリーズ(2013〜2016年)JIDAデザインミュージアムセレクション vol.21
tone シリーズ(2013〜2016年)JIDAデザインミュージアムセレクション vol.21

2014年〜 OriiMarbleの開発
建材商品の海外を含む販路拡大と、建築建材部門での売上の向上を図る。大型物件から小さな店舗や住宅等に至るまで建築案件の幅を広げ、建築マテリアル商品としての納品を可能にすることで、海外との取引や短納期にも対応できるよう取り組む。また、一部限定的に価格を明確にすることで、設計段階からスペックインされる機会を高めたり、有償サンプルとしても提供が可能となる。

Orii Marble(2014年)GOOD DESIGN 2016 受賞
Orii Marble(2014年)GOOD DESIGN 2016 受賞
Orii Marbleの施工事例(築地寿司清 日比谷店)
Orii Marbleの施工事例(築地寿司清 日比谷店)

2017年〜 自社ショールームを高岡と東京にオープン
常時、実物の確認ができる拠点として、ショールームを2拠点オープン。建築マテリアル商品の個人住宅や小規模店舗での採用率を高める。また、クラフト商品は、消費者への直接販売につなげることで利益率を高め、事業の持続化と産地の発信に努める。

高岡ショールーム「Orii garelly  八ノ蔵」(2018年)
高岡ショールーム「Orii garelly 八ノ蔵」(2018年)

2018年〜 着色表現の追求(Copper Scape)
建築業界では、平米単価が素材に対して価値の基準となる場合が多いが、唯一無二のマテリアルとして価値を高めることを目的に、折井宏司氏の作品としてプレゼンテーションを始める。

熱と薬品の化学反応によって銅板に表現された折井宏司氏のアートワーク
熱と薬品の化学反応によって銅板に表現された折井宏司氏のアートワーク

2019年〜 会社案内(カタログ)のディレクション
スタッフが10名を超え、折井氏が社長として、スタッフ一人ひとりに経営理念を現場で伝え、浸透させることがより大切になった。また、世の中に企業価値をしっかり伝えることで、選ばれる商品となると考えている。ミッション、ビジョン、バリューを言語化し、会社としての方向性を伝えることを目標に編集した。

会社案内構成のためのスケッチ
会社案内構成のためのスケッチ
理念を伝える会社案内の1ページ
理念を伝える会社案内の1ページ

2020年 本社工場ショールーム
コロナ禍の影響で展示会が中止になるなど、商品や技術の発表の機会がなくなり、今までのように新規顧客を開拓することが難しくなった。本社にショールームをオープンすることで、新作発表などの場を作り、ニーズのリサーチや商品検討など、消費者との結びつきを高める場所づくりを目指した。

本社ショールームの外観イメージスケッチ
本社ショールームの外観イメージスケッチ
本社ショールームの店内イメージスケッチ(陳列什器)
本社ショールームの店内イメージスケッチ(陳列什器)
本社ショールーム(2021年)
本社ショールーム(2021年)

【成果】

2012年からtone シリーズの開発によって、ライフスタイルという視点から、新しいビジュアルや展示会ブースをデザイン。新規顧客の獲得やメディアからの情報発信を得ることができ、新しい販売チャネルを広げる事ができた。
・2016年度「The wonder 500」(経産省)認定
・2019年 「JIDAデザインミュージアムセレクション2019」(日本インダストリアルデザイン協会)選定
Orii Marble は、装飾だけではなく、銅着色技術を建築マテリアル商品として建築・インテリア業界に広く訴求することにつながった。
・2016年「Good Design賞」受賞
展示会への定期的な出展を実施。年度ごとにビジョンに沿った展示会ブースの企画デザインを行う(2012年〜2023年)
会社案内(カタログ)は、ミッション、ビジョン、バリューを伝えるものとしてリニューアルを行った(2019年〜2022年)
社内の商品開発力や提案力も向上し、多様な業種、産地、伝統の枠にとらわれないコラボレーションも増加。それに伴って、国内外にクラフト商材の取引先も増加している。国内主要店舗は、蔦屋書店、HULS、D&Department Toyama、全国各地のインテリアセレクトショップなど。海外では、シンガポール、上海、台湾、オーストラリア、フランス、アメリカなどで展開を広げる。
現在、自社ショールームは東京に1拠点、富山県内に3拠点に拡大。モメンタムファクトリーOrii社は、2013年からの10年間でスタッフの数が4名から15名に成長した。
さらに、銅着色表現をデザインと捉えテキスタイルへ展開。アパレル事業へ展開し、梅田阪急の女性ファッションフロアにて単独企画展の出店を果たした。

展示会「IFFT interior Lifestyle Living 2018」ブースデザイン(2018年)
展示会「IFFT interior Lifestyle Living 2018」ブースデザイン(2018年)
展示会「JAPAN SHOP 2022」ブースデザイン(2022年)
展示会「JAPAN SHOP 2022」ブースデザイン(2022年)
阪急百貨店うめだ本店での企画展「COPPER SCAPE」ブースデザイン(2022年)
阪急百貨店うめだ本店での企画展「COPPER SCAPE」ブースデザイン(2022年)