神保真珠商店
琵琶湖真珠と神保真珠ブランド商品の新規顧客開拓
【経営課題】
1960年代、琵琶湖の真珠養殖産業は海外輸出によってピークを迎えていた。その後、水質の悪化や母貝の池蝶貝の激減などによって真珠の水揚高は減り続け、真珠養殖業は衰退した。その一方で、水揚高の回復に努め、環境変化に対応した母貝改良や水質改善に取り組んだことで、現在、数社の真珠生産者によって産業が引き継がれている。神保真珠商店は1966年創業。クライアントの杉山知子さんが引き継いだことで、三代続くお店となった。養殖業者から良質の真珠を仕入れ、製品にして下ろす事業を卸業をメインにしていた事業を、一般消費者向け(BtoC)の商店に事業転換した。県内でもあまり知られていなかった琵琶湖真珠と、神保真珠ブランド商品の新規顧客開拓が課題だった。
【計画・目標】
店舗経営を軌道に乗せ、琵琶湖真珠の認知を高めることを目標に、グラフィックデザイナー鈴木信輔氏のアートディレクションによって、2014年に実店舗をオープン。3年目を目標に、ジュエリーブランドとして確立し、都心部の百貨店などへの催事出店や、各種ライフスタイルメディアへの掲載を目指す。そして、5年目で自店舗以外の販売窓口を拡大し、様々なデザイナーとの開発商品をラインナップすることを目標に掲げた。このようなビジョンを共有し、オリジナルデザインのジュエリーを開発。2015年2月、H.P.France主催の合同展示会roomsへの出展によって、新規取引先の獲得を目指した。
【成果】
展示会の出展によって、神保真珠商店ブランドと琵琶湖真珠の認知に繋げることができた。次年度には、松屋銀座での人気イベント「銀座手仕事直売所」への出店や、D&Departmentでのイベントが決まるなど首都圏を中心に、各地でのイベントに出店し、ブランドを広めることができた。自分のライフスタイルを身につけるジュエリーの潜在的なニーズを掘り起こし、高級高価だけでない新しい価値観を真珠の生産者にも示すことができた。また、滋賀県のブランディング事業「MUSUBU SHIGA」にも参画。絶滅危惧されている池蝶貝の殻(最盛期に真珠養殖を終え保存されていた貝殻)を使った企画展を行った。このときにデザインした「Biwako Button」が、BEAMS JAPANの目に止まり、現在に至るまで取り扱い商品の定番となっている。2017年には、新しい店舗に移転。店舗増床に伴って、店舗及びディスプレーのデザインをリニューアルし、滋賀のお茶やお菓子を提供するカフェスペースを併設。地域の作り手を巻き込んだショップづくりを行った。商品開発に於いては、Proof of Guild竹内稔氏を招き新商品を開発し、神保真珠商店ブランド商品の新たな顔となった。現在では、ジュエリーブランドとして広く認知され、店舗での企画展や各地でのイベントなど、地域や業種を超えた経営を実践している。