
日本遺産鐵の道文化圏「出雲國たたら風土記」
地域の魅力を地域の人が発見できることを目指して
【経営課題】
日本刀に欠かせない鉄は「玉鋼」と呼ばれ、その製鉄技術の「たたら」はジブリアニメもののけ姫でも広く知られるようになった。たたら製鉄の発祥の地と言われるこの地域一帯は、奥出雲町、雲南市、安来市に別れているが、和鉄づくりを基に発展してきた一つの文化経済圏である。豊かな木材で薪や炭を作り、豊富な水源を利用して、地形を変えるほど砂鉄を掘り、全国に良質の玉鋼を供給してきた。この地方で語り継がれるヤマタノオロチ伝説も、一連の開発に伴う自然災害が元になっていると言われている。
しかし、地形を変えるまで山を崩し荒れた土地に暮らす人々は、土地を守る人でもあった。荒野にそばを蒔き、肥沃な土地に改良しながら稲を育て、何百年にもわたって一帯の棚田の風景を作り、出雲にそばの文化を定着させた。
この鐵の道文化圏は、歴史、伝説、景観、食文化、温泉など、和鉄だけではない観光資源のポテンシャルを秘めた魅力的な日本遺産である。地域文化の発信に於いて、いかに関心を高めることができるかが課題であり、関係人口の増加をキーワードに、地域を巻き込んださまざまなアプローチが試みられてきた。


【計画・目標】
この地域は、歴史や刀剣に関心が高い人によく知られており、TWILIGHT EXPRESS瑞風のツアーコースにもなっている。その一方で、県内や近隣の人たちにとって関心が高い場所ということではない。より多くの関心につなげるには、地域の人々が関心をもつことが大切だと考えている。「菅谷たたら山内」をはじめとする13の関連施設に設置するサインのデザインによって、近郊地域からの新規訪問者の増加を目指した。SNSをメディアとした情報の広がり方など、潜在的なニーズや、時代性を伴った伝え方を考慮し、サインを起点としたさまざまな可能性の広がりをデザインに落とし込んだ。女子旅や、子供連れでのおでかけの候補地として、近くて新しい入口をつくることを目標とした。



【成果】
きつねをモチーフにしたサインは、たたら製鉄の伝説が語れるようにデザインした。きつねは、製鉄の女神の金屋子神が、各地に技術を伝えるために使った移動手段と言われている。また、ハート型にデザインした鼻は、たたらのある建物(高殿)の敷地でご神木とされている桂の葉形とイメージをリンクさせた。子供の目線に合わせることで、親しみやすさを表現している。関連施設の中で、今も技術を伝える金屋子神を待っているきつねの様子をサインとしてデザインした。
また、新しいサインのお披露目でノベルティーとして配布するトートバッグのために、サインのデザインをテキスタイルへ展開。キャラクターとしてのデザインではなかったが、関係者の間で「きつねちゃん」と呼ばれ親しまれている。2021年にお土産として販売するため商品化され完売した。再販売を望む声があり、2023年にも再生産が予定されているようだ。



